提案力を強くする思考法:デザイナーが説得力を持つために意識すべき3つの判断軸

「安心感のあるデザインで」「ちょっとリッチな感じにして」──クライアントや上司からのオーダーは、時にざっくりしていてつかみどころがありません。

そんな中で、実力を問われるのが「提案力」です。いいデザインを作るだけでなく、なぜそれが“最適解”なのかを説明する力。これは単なるトークスキルではなく、思考の整理・判断軸・視点の持ち方で磨かれるものです。

この記事では、そんな「提案力」を支える3つの判断軸と、実際の提案前に活用できるチェックリスト、そして実例を交えて、明日からの実践につながる思考法をお届けします。

目次

「いい感じ」で詰まる現場──よくある提案の悩みとは?

  • クライアントの要望がふわっとしていて解釈が難しい
  • 自分の提案に自信が持てず、フィードバックに振り回される
  • デザインの意図を言語化できず、説明が弱くなる

このような悩みは、デザイナーなら誰しも一度は経験しているはずです。

その原因の多くは「判断軸」が曖昧なままデザインしてしまうこと。

つまり「何を根拠に、なぜそうしたか?」が自分の中で明確でないまま、感覚やセンスだけで提案してしまっているのです。

そこで次に紹介するのが、提案に“説得力”を持たせるための3つの視点です。

デザイン提案の“判断軸”を持つ:制作前に意識すべき3つの視点

デザインには正解がないからこそ、「なぜこのデザインなのか」を支える視点が必要です。以下の3つは、提案をつくる前に持っておくべき“判断軸”です。

1. ユーザー視点:そのデザインは誰に、何を伝えるもの?

  • ペルソナやユーザーストーリーを具体化する
  • 「誰の、どんな課題」を解決するためのデザインか?

2. 目的視点:このデザインが達成すべきゴールは何か?

  • その制作物のKPI(例:クリック率、CV数など)を意識
  • 訴求内容やCTAとどう繋がるか?

3. 論理視点:なぜこの構成・トーン・色にしたのか?

  • 導線・視線誘導・情報設計などに対する意図
  • 曖昧な「なんとなく」ではなく、ロジックを言語化

この3つの視点を持っておくことで、制作途中でも迷いが減り、フィードバックに対する説明もしやすくなります。

提案の前に立ち止まる:相手に伝わるための“5つの問い”

提案の場で「自信がない」「通らない」「伝わらない」と感じたことはありませんか?

実は、提案力の差は「言語化の準備ができているかどうか」で大きく分かれます。

ここでは、提案の前に“自分に問いかけておくべき”チェックリストを5つ紹介します。

1. このデザインは誰の、どんな課題を解決しているか?

→ ユーザー視点の整理

2. このデザインの目的(ゴール)は明確か?

→ 目的視点と成果の接続

3. 色・構成・文字サイズなどの選定理由はあるか?

→ 論理視点の具体化

4. ユーザーがどう行動することを想定しているか?

→ 導線設計の根拠

5. クライアントや上司の期待に沿っているか?

→ 要件・背景に対する整合性

これらを事前に整理しておくことで、「聞かれて焦る」状況を回避し、提案の説得力が飛躍的に高まります。

「でも、実際の提案ではどう伝えればいいの?」

そんな疑問に応えるために、次に「提案に通る」構成と伝え方の実例をご紹介します。

実例で学ぶ:「提案に通る」構成と伝え方の違い

案件例:美容液商品のLP制作

依頼内容:

  • 30代女性向けの高保湿美容液
  • 「高級感」「安心感」を伝える
  • 初回購入のCV率を上げたい

❌ Before(説得力が弱い提案例)

「全体的に白をベースに清潔感を出し、写真はツヤ感が伝わるモデルを使用しています。信頼感を出すためにレビューを中央に配置しています」

“なぜそれが適切なのか”が説明されていない

→ 情緒的には伝わるが、ビジネスゴールとの接続が弱い。

✅ After(判断軸に基づいた提案例)

「30代女性のスキンケア悩みに多い“乾燥・小ジワ”にフォーカスし、保湿効果を強調する構成にしました。初見ユーザーが不安を感じないように、ファーストビューに“皮膚科医監修”のコピーを配置。CVボタンは、スクロール位置に合わせて常に目に入るよう固定表示としています。CTAは“今なら初回70%OFF”で即効性を重視しました」

この提案に含まれる3つの視点:

  • ユーザー視点:
    • 30代女性の悩み(乾燥・小ジワ)に具体的に対応
  • 目的視点:
    • 初回購入のCV率向上を狙い、「初回70%OFF」のオファーを設計
  • 論理視点:
    • ファーストビューに安心要素を配置し、導線設計としてCVボタンを固定表示

まとめ:判断軸があるだけで、提案の不安が消える

デザインは「良さそう」に見えても、意図を説明できなければ通りません。

逆に、「なぜこのデザインなのか?」を言語化できれば、提案は“感覚”ではなく“戦略”になります。

提案力を高めたいすべてのデザイナーにとって、今日から意識したいのは以下の3つ:

  • ユーザー視点(誰に届けるか)
  • 目的視点(何を達成するか)
  • 論理視点(なぜそうしたか)

この3軸と、5つの問いを自分の武器にすれば、どんな提案にも自信を持って挑めます。

最後に一言──

「センス」で勝負するより、「意図を伝える力」を磨こう。

あなたの提案が、もっと通るようになりますように!